「30代後半オカンひとり旅」は、ホームである滋賀県を基点に毎月1都道府県を旅し、40歳までに47都道府県制覇を目指すライフイベントである。仕事や家庭がある中、あえて一人旅をすることを楽しむ。2025年6月からスタートし、この度第8都道府県目をクリア。
2026年1月、記念すべき新年最初。第8都道府県目は大阪府だ。
さて、2025年6月、上記の旅のしおりをしたためた私はこう述べている。
このライフイベント、私が40歳になるまでに達成しなければなりません。そして、実施期間の設定から、お気づきの方もいらっしゃるでしょう。1か月でもサボると達成できない仕様になっています。こうでもしないと動かない自分を知っているからです。
「これはヤバいぞ」って月もあるかもしれません。そういう時には、そもそもお家のある「滋賀県」や、ふらっと行ける「京都府」「大阪府」なんかに行けばなんとか達成できるだろうと高を括っています。
特にそこまでヤバくないにも関わらず、「これはヤバいぞ」のカードを1枚使ってしまった。そんなひとり旅だ。
生まれは岡山、大学は京都、嫁ぎ先は滋賀の私としては、大阪は身近な地だ。月に2度は大阪に行ってる気がする。だから、今回はわざわざ大阪を旅行しようと考えたわけではない。出張にかこつけて(これは私の常套手段だ)、「初笑い」しようと思っただけだ。
そう、今回の旅のメインはNGK(なんばグランド花月)……吉本興業の本拠地である。
私は別に、お笑い好きではないと思う。M-1も観ないし、特に興味はない。最近では、アイドルとお笑い芸人の区別もつかない。
でも「よしもと新喜劇」だけは、子どもの頃から大好きなのである。
(説明するまでもないとは思うが)よしもと新喜劇とは、吉本興業の芸人さん達が即興性の高い喜劇を舞台上で演じる、大阪の代表的エンターテイメントである。
1989年、消費税導入とともに生まれた私は、いわゆる「ゆとり世代」ど真ん中だ。総合的な学習の時間というものが出現し、個性が叫ばれ、土曜日の授業がなくなった。
小学校低学年あたりに土曜日の午前登校がなくなるまで、学校から帰ってお昼を食べて、テレビをつけると流れていたのが、新喜劇である。
新喜劇を観ながらリビングで笑い転げる私を見て、父は「このバカ笑い!」と目を細めて笑っていた。
大阪への家族旅行で私が選んだ「じぶん土産」は、背中のボタンを押したら「汗ばむわ~」と声が出る山田花子のキーホルダー。しばらくランドセルの横につけていた。
ある時、岡山に新喜劇が来るということで、父がチケットを取ってくれた。会場は、岡山シンフォニーホール。初めて生で観た桑原和夫の天を仰いで叫ぶ「神様!」は、こんなに響くものなのかと感動した。
それが、私の新喜劇の思い出である。
まだ、藤井隆が「ホット!ホット!」と叫んでいた時代だ。
今回の大阪ひとり旅は、そんな思い出を20年越しに上書きする旅なのだ。
実家を出てから、あまりテレビを観ることがなかった。新喜劇も、たまに夫か子どもが付けていたテレビで流れて、かろうじて「乳首すな」を知っているくらいである。「乳首すな」ですら、私からしたら新しい。
新喜劇のみならず、お笑いというものにもしばらく触れていない。そして触れても、笑えない自分がいた。お笑い芸人がコントや漫才をやっていても、「何がそんなに面白いのかわからない」と顔をしかめるわけだ……

